脱税とは、不正な行為により課税を免れることによって成立する犯罪をいいます。主な脱税の法定刑は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金またはその併科です(所得税法238条1項、法人税法159条1項等)。
脱税は故意犯ですから、犯罪が成立するには故意すなわち、脱税の認識が必要です。そして、その認識の内容は、いくら所得を圧縮したか具体的な金額までを認識する必要はないとされています。一方で、故意に所得を隠匿する行為とは無関係に生じた所得の過少申告分については脱税にはあたらないとされています。
脱税の逮捕の傾向
検察統計によると、平成25年における所得税法及び法人税法違反既済事件の総数257件のうち、逮捕されたものは31件(12.1%)、逮捕されない在宅のものは226件(87.9%)となっています。このことから逮捕される可能性は低い傾向にあるといえます。
脱税の逮捕の状況
また、警察で逮捕された件数は0件(0%)、検察で逮捕された件数は31件(100%)となっており、全て検察庁(特捜部)事案となっています。
脱税の逮捕後の措置
さらに、検察で逮捕された31件のうち勾留が許可されたのは31件(100%)、勾留が却下されたのは0件(0%)、検察で釈放されたのは0件(0%)となっています。逮捕されれば勾留されるのは確実といえます。
なお、国税庁による平成25年度の査察の概要によると、査察着手件数が185件に対して、告発件数は118件であり、告発率は63.8%となっています。
脱税の起訴・不起訴の傾向
検察統計によると、平成25年の所得税法・法人税法違反により公判請求された件数は218件、不起訴処分となった件数は133件となっていますが、不起訴となっているのは共犯者等で、納税義務者が不起訴となることはほとんどありません。
脱税の裁判の傾向
裁判所の司法統計によると、平成25年に第一審において所得税法違反及び法人税法違反で有罪となった件数は159件、無罪となった件数は2件、公訴棄却等が0件で、有罪率は98.8%となっています。
内訳をみると、実刑判決は70件(43.5%)、執行猶予判決は89件(55.3%)、無罪は2件(1.2%)となっています。
このことから、執行猶予が付される可能性が比較的高い傾向にあるといえます。
査察事案については納税義務者の場合、100%起訴されることから、その前段階の査察部による検察庁への告発を阻止する活動が重要となります。そのために、査察部による調査への対策が必要となります。
任意調査の段階では、広く関係者の取調べ等が行われるのが通常です。初めは参考人として取調べを受けていたのに途中から嫌疑者として扱われることもあります。こういう容疑で取調べを受けるいわれはないと思う場合には、弁護士に相談してください。弁護士が調査機関と交渉したり、意見書を提出したりして、容疑があらぬ方向に広がったり、依頼者が逮捕されるのを防ぐことができる可能性があります。不安な状態のまま捜査・調査の流れに身を任せるのは決して得策ではありません。
特に、脱税事件の弁護は特殊な専門性・経験が不可欠です。どの弁護士に依頼するかによって大きく今後を左右されることになりかねません。