ある公然わいせつ事件について、当事務所の刑事事件のベテラン弁護士の適切なアドバイスを受けつつ、当事務所の気鋭弁護士が熱心に公判活動を行った結果、3月6日、東京地裁において、無罪を勝ち取ることができました。
男性が、ある日の夜、公園内のトイレに行くため歩いていると、滑り台に女子高生2人が座っていました。男性は彼女らの横を通りすぎ、トイレに入り、ズボンを下げるなどして用を足したりしました。
しばらくして男性がトイレから出て、乗ってきた車に戻るため公園内を歩いていると、女子高生から通報を受けてやってきた警察官に任意同行を求められ、男性は、「公園内で下半身を露出した」との公然わいせつの容疑で逮捕され、勾留されてしまいました。
男性は、容疑を認めれば罰金で済むような事件でしたが、「トイレの外で下半身を露出したことはないので、認めるわけにはいかない」といって否認を続けたところ、20日間勾留されて起訴されてしまいました。当事務所の弁護士は男性の保釈をとった上、公判に臨み、男性が下半身を露出したのを目撃したとする女子高生1人の証人尋問を行うなどしました。
当事務所の弁護士チームは、本件のポイントは目撃証言の信用性に尽きるので、検察に釈明を求め犯行場所を特定してもらうこと(トイレ内は含まれないこと)、女子高生2人の供述調書を全て開示してもらうこと、110番通報記録を開示してもらうこと等の方針を立てて、証人尋問の準備を行い、反対尋問において、証人が男性の具体的な行動をほとんど記憶していないこと、捜査段階の供述と証言には食い違いがあること、男性が下半身を露出しているのを目撃したというのに女子高生2人がその場に長いこと留まっていたというのは不自然であること等を明らかにし、その旨の弁論を行いました。
裁判所は、このままでは有罪判決が書けないと思ったのか、一旦結審した裁判を再開し、同じ女子高生の2度目の証人尋問を行いましたが、証言はさらにあいまいなものとなり、結局、裁判所は、無罪判決を言い渡したのでした。
判決要旨は、以下のとおりです。
唯一の証拠である女子高生の証言は、具体性がなく、変遷も認められ、信用できない。犯罪の証明がないので無罪。
そもそも夜中に公園で遊んでいるような女子高生の供述だけを証拠に(しかも、もう1人の女子高生は、男性が下半身を露出しているところは見ていないと供述していた)、事実を否認している男性を軽微な容疑で逮捕し、20日間も勾留した上、否認のまま起訴したこと自体に問題があるといえる事案でした。
日本の刑事裁判の有罪率は、99.9%といわれています。検察が、まず間違いなく有罪になると判断した事件だけを起訴し、裁判所も被告人の主張より検察官の主張を信用しがちですから有罪率99%超えも不思議なことではありません。しかし、やってもいない事実で人を処罰していいわけがなく、そのために弁護人がいるわけなのですが、捜査や裁判の実務経験を積んでいない弁護士を何人頼んでも無罪を勝ち取ることはほとんど不可能です。そのことは、複雑困難な事案でも、本件のような単純な事案でも同じです。
刑事事件の実務経験を積み、事件や証拠のポイントを見極めることができ、かつ、依頼者のために全力を尽くして弁護活動を行ってくれる弁護士を探して依頼してください。当事務所では、そういう資質のある弁護士がチームを組んで弁護活動を行います。
報道機関により報道もされていますので、以下に引用します。
公然わいせつで無罪、東京地裁 「目撃証言信用できず」
東京都内の公園で下半身を露出したとして、公然わいせつ罪に問われた都内の自営業の男性(52)の判決で東京地裁は6日、「目撃者の証言は信用できない」として無罪を言い渡した。求刑は罰金30万円だった。
男性は昨年4月17日深夜、足立区内の公園で下半身を露出したなどとして現行犯逮捕され、起訴された。公判では、「目撃した」と110番した女子高生の証言だけが証拠となっていた。
細田啓介裁判官は判決理由で「目撃者は事件直後、詳細に男性の様子を証言したのに、法廷証言はあいまいで、信用性がない」と指摘した。
共同通信